メルクマニュアル家庭版, 日焼け 214 章 日光と皮膚の障害
日焼けは、過剰な紫外線に短時間で急にさらされた結果として起こります。どの程度紫外線を浴びると日焼けするかは、個々人の皮膚色素の量とメラニンをつくり出す働きによって異なります。
日焼けをすると、皮膚は赤くなって痛みます。日焼けがひどい場合は皮膚が腫れ、水疱ができることもあります。日焼けの症状は、紫外線を浴びて1時間ほどたったころに出はじめ、1日後にピークに達します。日焼けがひどいと、発熱、悪寒、脱力などの症状が出ることもあり、まれですがショック症状(重度の低血圧、失神、明らかな衰弱など)に至る場合もあります。日焼けして数日たつと、生まれつき皮膚の色が白い人は日焼けした部分の皮膚の皮がむけて、そこがかゆくなります。このようにして皮がむけた部分は、その後数週間は通常より日焼けしやすくなります。若いうちに重度の日焼けをした人は、その後長期間日焼けしなかったとしても、後に皮膚癌になるリスクが高くなります。
予防
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日光の害を防ぐ最も有効で簡単な方法は、強い直射日光にあたらないようにすることです。もし屋外に出なければいけないとしても、皮膚がヒリヒリしたり赤くなる徴候が現れたら、すぐに日陰に移動すべきです。衣類や普通の窓ガラスでも有害な光線はかなり防げます。水はフィルターとしては適当でなく、30センチメートル程度の深さの透明な水なら、UVAとUVBは透過してしまいます。雲や霧もフィルターとしての性能が低いので、曇りの日や霧の日でも日焼けはします。雪、水、砂は日光を反射するので、皮膚に届く紫外線の量を増加させます。大気が薄いとより強い紫外線が皮膚にあたるため、海抜の高い土地では日焼けしやすくなります。
強い直射日光にあたる前に、紫外線をカットして皮膚を守る化学物質を含む、日焼け止めの軟膏やクリームを塗るべきです。ほとんどの日焼け止めが防ぐのはUVBだけですが、最近の新しい製品ではUVAも同様に防ぐものがあります。
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日焼け止めには、パラアミノ安息香酸(PABA)、ベンゾフェノンなどの紫外線を吸収する物質が含まれています。PABAはすぐには皮膚にしっかりと結合しないので、これを含む日焼け止めを使うときには、日のあたる場所に行ったり屋外で泳いだりする30〜45分前に皮膚に塗らなくてはなりません。PABAは皮膚をヒリヒリさせたり、アレルギー反応を引き起こすことがあります。多くの日焼け止めにはPABAと、ベンゾフェノンその他の化学物質が両方が含まれており、併用によってより広い幅(波長)の紫外線を防ぐことができるようになっています。また、日焼け止めの多くは水に強いとか耐水性があるとうたっていますが、泳いだり大量に汗をかいたりした場合は、このような製品でも塗り直しをする必要があります。
「サンブロック」と呼ばれる、効果の高い日焼け止めには、酸化亜鉛、二酸化チタンなど物理的に光を通さない成分が含まれています。これらの濃く白い軟膏は、皮膚を日光からほぼ完全に守ることができ、鼻や唇のような敏感な部分にも塗ることができます。化粧品の中にも、酸化亜鉛や二酸化チタンが含まれている製品があります。
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日焼け止めはSPF値、つまり日光をどの程度防げるかを示す数値によって区分けされています。SPF値が高い製品ほど、皮膚を日光から守る効果が高くなっています。SPF値が0〜12の日焼け止めは、最小限の保護効果しかありません。13〜29の製品は、中程度の保護効果があります。SPF値が30以上の製品は最も高い保護効果があります。
治療
日焼けしてヒリヒリし熱くなっている皮膚は、冷たい水を含ませた湿布をすると症状が和らぎます。皮膚用の保湿剤も同様ですが、使う製品は皮膚に刺激を与えるおそれがある麻酔薬や香料が含まれていないものでなくてはなりません。非ステロイド性抗炎症薬(痛み: 非ステロイド性抗炎症薬を参照)は皮膚の痛みや炎症を和らげます。ステロイドの錠剤も炎症を鎮めますが、日焼けの状態が最も深刻な場合しか使いません。抗生物質のやけど用クリームは、ひどい水疱ができている場合にのみ使用します。日焼けでできた水疱の多くは自然に破れるので、できてから3〜4日たってもまったく破けない場合を除けば、つぶしたり吸引する必要はありません。日焼けした皮膚が感染症を起こすことはめったにありませんが、もし起こした場合は治るのに時間がかかります。その場合は医師の診察を受け、感染症の程度に応じて必要なら抗生物質を処方してもらいます。
日焼けした皮膚は数日のうちに自然に治りはじめますが、完全に元の状態に戻るには数週間かかります。日焼けした皮膚がむけた後の新しい表皮は、薄くて最初のうちは日光にかなり敏感なので、数週間は日焼けしないよう保護します。
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